当協会は、更年期に現れる諸症状により、仕事にどのような影響があるか、その実態と必要な対策を探るため、アンケート調査を実施いたしました。
本調査は,「更年期と仕事に関する調査」として日本放送協会(NHK)と社団法人女性の健康とメノポーズ協会(実施当時一般社団法人),特定非営利活動法人POSSEとの共同企画により2021年7月に実施したものです。
目次
更年期症状を有する対象者を振り分けるため、スクリーニング調査と本調査の2段階で実施
■スクリーニング調査
日本在住の20~69歳の女性26,462人を対象
国勢調査に準じて,性別・年代・地域別ブロックに標本を比例配分
■本調査
スクリーニング調査回答者のうち以下女性4,296名を抽出して分析を行った
・現在または過去3年以内に、受診推奨レベルの更年期症状とその自覚があった者
・症状出現時に有職であった者
・40~59歳
監修・分析・考察 有馬牧子・昭和大学医学部医学教育講座 講師
「更年期症状による、あなたの辛さ・日常生活への深刻度」について、「全く影響がない状態」を「1」として「日常生活が困難な状態」を「5」としたところ、すべての年齢群において、中程度「3」以上の比率は7割以上であった。
更年期症状により集中力や仕事へのモチベーションの低下、及び精神的に不安定になるなど,仕事や生活への支障が大きいことが推察された。
職場で経験した更年期に関する支障については、「更年期症状で職場の人に迷惑をかけたと思った」が15.1%、「更年期症状への配慮(業務量や業務時間を調整するなど)がなかった」が9.8%の順で高い回答であった。
更年期症状が原因で就業状況に影響があったかを聞いたところ、19.6%が仕事を辞めたか、仕事を辞めることを検討していた。
「更年期が原因で仕事を辞めた」及び「仕事を辞めることを検討した」要因はほぼ共通しており、「更年期について嫌がらせやハラスメントを受けた」においては、仕事を辞める確率が仕事を辞めないことに対して4.41倍高く、「職場の人に迷惑をかけたと思った」においては、仕事を辞める確率が仕事を辞めないことに対して2.77倍高く、「更年期への配慮がなかった(業務量や業務時間の調整など)」においては,仕事を辞める確率が仕事を辞めないことに対して2.79倍高かった。
職場で問題を抱えたとき 誰に相談したかを尋ねると、「同僚」、23.5%でおよそ4分の1に上る一方、「誰にも相談していない」という人が60.8%であった。
「仕事を辞めた」、及び「仕事を辞めることを検討した」における共通の要因である、「更年期について嫌がらせやハラスメントを受けた」「職場の人に迷惑をかけたと思った」及び「更年期への配慮がなかった」の背景には、女性の健康に関する情報が足りないこと、また未だ触れづらい話題であり、相談する事も相談を受けることもできない状況があることが考えられる。
まずは、更年期の不調は誰にでも起こる可能性があり、一時的なものであることを理解する必要がある。その上で、女性の健康に関するヘルスリテラシーを高める取り組みとして、正しい知識を学ぶ機会づくりが求められる。更に、業務量や業務時間の調整など、症状の影響度に応じた適切な配慮ができる環境作りのため、組織の中での対話に必要な知識・ノウハウの習得といった人材育成も求められる。
当協会では、女性の健康とより良い働き方、また、より良いワークスタイルについて、基本的な知識を習得する「女性の健康検定®」を実施しているが、昨今リテラシー向上のための健康教育だけでなく、支援型リーダー育成や管理職研修などの人材育成、また、女性特有の健康課題の相互理解により職場のコミュニケーション向上などを目指した女性の健康経営などに活用する企業も増えている。
更年期世代は働く女性の1/4を占める。この世代が豊かなキャリア形成を構築できるための環境づくりは、「女性の健康経営®」を推進し、人材の定着や労働生産性の向上だけでなく、女性リーダーの積極的な育成、および様々な世代や働き方が尊重されるダイバーシティ意識の推進にもつながると考えられる。
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