全身の痛み、筋肉痛、関節の症状(頭痛・肩こり、腰痛、関節痛、全身が痛い、指のこわばりなど)
目次
関節痛、手のこわばりはなぜ更年期に起こるのか
目が覚めたときに手がこわばって動かない。全身の関節が痛み、ベッドから起き上がるのも大変。着替えをしたり、家事を始めようとしても食器を持つことすらできない…。このような朝の手のこわばりや関節の痛みは、慢性関節リウマチの症状としてよく知られていますが、更年期にもよく見られる症状です。電話相談でも手のこわばりに関する悩みは非常に多く、関節リウマチを疑って検査を受けたが、結果は陰性で、「リウマチではないといわれた」という声もよく聞かれます。
関節リウマチとの違いを確認する(鑑別診断)
関節リウマチは自己免疫疾患のひとつで、痛みを伴う関節の腫れ、こわばりが起こり、関節の変形や関節破壊へと進行します。関節だけでなく、発熱やだるさ、筋肉痛、皮膚疾患、神経炎など症状はしだいに全身に及び、QOL(生活の質)が非常に脅かされるのが患者さんにとって大きな問題です。患者数は女性が男性の4倍も多く、特に40代から発症する人が多いのが特徴です。ちょうど更年期世代とも重なるため、初期のうちは更年期症状と見分けがつきにくいのも実情です。もし、朝目が覚めて1時間以上こわばりが取れないなどで不安を感じたら、一度はリウマチ検査を受けてもよいでしょう。「リウマチ科」や「膠原病科」またはリウマチ外来のある整形外科などを訊ねてみてください。
朝のグッパー体操で関節のこわばりをほぐそう
痛いからといって動かさないでいると、血流が悪くなりますます動かしにくくなります。朝、目が覚めたらふとんから体を起こす前に、手のひらや甲をすりあわせるようにしてマッサージしたり、グーに握った手のひらをゆっくり開き、また握ったりする体操を行ってみてください。無理のない運動を続けることで、手が動かしやすくなったという声もよく聞かれます。
<グッパー体操>(当協会オリジナルDVD「メノポーズ体操」より)
①寝たままで、両手の指をグッと握ってパッと開く(手指のグッパー体操)
②手の指を一本ずつ握ってぐるぐる回し、シュッといいながら引き抜くように伸ばす。
③さらに、両手の指をからませるように組み、首の関節をぐるぐる回す。
④続けて、足の指も開いたり閉じたり、グッパー体操を行う
⑤足の指に手の指をかませ、ぐりぐりと回す。足の裏をトントン叩く。右手で左足、左手で右足を、手の甲でもぴたぴたと叩く。
関節はエストロゲンに守られている
整形外科などを受診してリウマチではないことがわかると、これまでは手指の痛みやこわばりにあまり対処法がありませんでした。「年のせいだからしかたがない」「あまり動かさないように」などと言われ、抗炎症成分を含む湿布薬などを処方されるだけということにもなりがちでした。最近、この痛みにエストロゲン減少が関係していることがわかってきました。エストロゲン受容体は子宮内膜や乳腺、骨、皮膚、血管に多くあり、組織の柔軟性を保つ働きをしています。このエストロゲン受容体が関節や腱の周囲にある「滑膜」にも非常に多く存在し、柔軟性を促して腱や腱鞘を保護しているのです。そこで、更年期に入ってエストロゲンが急速に減少すると腱や関節が腫れて痛み、こわばって動かしにくくなるという現象が起こります。産後の授乳期などにも女性ホルモンが変動するため、これらの関節の痛みはよく起こり、腱鞘炎に悩む人が増加します。
産後・授乳期のホルモン変動は一時的なものでいずれ元に戻りますが、更年期ではエストロゲンのない状態が長く続くため、滑膜の炎症がひどくなり、変形を引き起こすこともあります。こうして起こる手指の関節の病気(「ヘバーデン結節」「ブシャール結節」)などについて、日本手外科学会では「メノポハンド」という名称で啓発活動を行っています(上記のリンクを参照)。また、HRTによるエストロゲン補充やエクオール成分の摂取は、こうした関節の炎症を抑え、変形などを防ぐという報告があります。
頭痛とエストロゲンの関係
女性の多くは、実感として「月経に関連して頭痛が起こっている」ことを知っているのではないでしょうか。実際、20~40代では、同世代男性の2~4倍の多さで頭痛に悩まされているというデータがあります。これら女性に多い慢性頭痛は「片頭痛」で、生理周期や妊娠・分娩・産褥、閉経に伴う女性ホルモンの低下にも大きく影響されることがわかっています。そこで、閉経してしまうと頭痛も改善する人が多いのですが、閉経前の月経不順の頃には女性ホルモンの分泌が不安定になるため、頭痛がよりひどくなる人が見られます。
<片頭痛の特徴>
・ズキンズキンと脈打つ痛み/どちらか片側が痛い/動くと痛みが増す/光がまぶしい/音が気になる/顔色が蒼白になる/吐き気、おう吐
※片頭痛には「目がチカチカする」「ぼやけて見えにくい」などの予兆のあるものと、ないものがあります。「片頭痛」「緊張性頭痛」の詳しい診断は、頭痛外来、神経内科などを受診してください。
肩こりに悩む更年期女性は多い
更年期に入って「肩がずっと重い」「肩や首がこわばり、頭も痛くなる」など、肩こりの訴えは、電話相談でもよく聞かれます。医療機関の更年期外来の集計でも、自覚症状として疲れやすさや倦怠感(だるさ)とともに、肩こりの訴えが非常に多いというデータがあります。ただし、のぼせ・ほてり・ホットフラッシュなどの血管運動神経系の更年期症状とは異なり、肩こりでは症状の重さとエストロゲン値の低下や閉経の有無にははっきりした関連は見られません。
肩こりに悩む更年期女性は多い<「電話相談からみる更年期世代の実態」のページを見る>
頭痛は疲労や生活習慣の問題から起きている場合も
こうしたことから、肩こりや首の痛み、頭重感には、加齢や疲労、生活習慣も影響すると見られます。たとえば、体調が悪いせいでいつもうつむきがちになり、猫背の姿勢を続けていたり、めまいなどのせいで体を動かす機会が減っているということはないでしょうか。不調があると体が緊張して「肩に力が入った」状態になり、特に肩から上の血行が悪くなります。すると筋肉に疲労物質や痛み物質がたまり、肩こりや腕の痛み、頭痛、腰痛などの原因になると考えられます。このため、HRTは肩こりの症状に対してはホットフラッシュなどのように効果的ではないとされています。ただし、HRTを行うことでのぼせやほてり、ホットフラッシュが改善し、気分が明るくなることでその二次的な効果として疲れやすさや肩こりが改善されるケースはあります。
毎日の軽いストレッチで痛みやコリを解消
ちょっとした痛みやコリ、だるさを放置せず、毎日解消することが、ひどい肩こりを防ぎます。痛みをきっかけに、生活スタイルを見直してみましょう。横になったり座ったりしている時間が増えすぎていたら、1時間に5分だけでいいので体を動かしましょう。手をぶらぶらさせたり、大股で歩き回るだけでも体のコリをほぐすのに役立ちます。なお、肩こりが悪化して起こる頭痛は「緊張性頭痛」といって、ズキズキではなく全体に締め付けられるような痛みや重苦しさが特徴です。緊張性頭痛は、血流の悪さが影響するのでお風呂で湯船にゆっくり浸かるなどして血流をよくすることをおすすめします。
【みんなが感じている痛みの症状】(当協会電話相談より)
手足のしびれ、こわばり
手足のこわばりとしびれなどがあり、内科や整形外科、整骨院などを巡ったが治らなかった。脳神経外科の血液検査でも問題はないので、更年期症状ではないかと思う。特に朝がつらいくて、手を握ることもできない。(44歳・未閉経)
手の指がじんじんと痛いがリウマチ反応はマイナス。痛い指先をかばいながら引き出しを開けたり包丁を握ったりという家事をこなそうとするので、右腕全体がこっている。(64歳・閉経52歳)
月経不順が続いていて、そのうち手の指と手首の関節が痛くてたまらなくなった。握力がなくなり、雑巾もしぼれない。作業ができないのでパートもやめるしかなかった。リウマチ検査をしたが陰性だった。ヘパーデン結節の診断と治療ができる病院を教えてほしい(48歳・未閉経)
足先がピリピリして、布団の中で毛布が指先にこすれただけでも痛く感じるようになった。どこに行ったらいいかわからず婦人科に行ったところ「むずむず足症候群かもしれない」と言われ、睡眠クリニックへの受診をすすめられた。そんな病気があるとはびっくり。(47歳・未閉経)
頭痛・頭重感・肩こり
朝、眠りから目が覚めるとき、頭痛を感じている。調子のよいときは起きて動き出すと頭の痛みがとれてくる。体調が悪いときはつい横になっていたくなるが、少し体を動かしたほうが頭痛や肩こりは楽になるようだ。(50歳・未閉経)
閉経してからもう5年を過ぎ、更年期は終わったと思っていたのに今になって症状がいろいろでてきた。特に肩こりがひどく、荷物を持つだけで肩がしびれるようなときがあるので買い物も少しだけにしている。(56歳・閉経50歳)
子宮筋腫の治療のため、エストロゲン分泌を抑える注射(GnRHアナローグ)で月経を止めた。その後、うつ気分とともに頭痛を感じるようになった。(50歳・未閉経)
腰痛、関節痛、全身の痛み
50歳になる頃から両手首が痛くなり、その後左肩のつけ根が痛み、その他の関節も痛くなってきた。整形外科では異常ないといわれ、「年のせい」と言われてしまった。その後、更年期症状で関節が痛くなるということを知って少しほっとした。朝起きるとき、座っていてイスから立ち上がるときなどにとても痛むので、関節痛夜中に目がさめる、痛さで不安でしょうがない。(50歳・未閉経)
今日は首、明日は背中というように、痛みの場所が毎日違っていてふしぶしが痛む。筋肉痛のようでもある。血液検査をしたら、まだ女性ホルモンの数値はそんなに下がっていないといわれるのだが。(46歳・未閉経)
腰から下の関節が痛くて曲げにくく、板が入ってつっぱっているように感じる。(52歳・閉経50歳)